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2020年11月10日

【歯周再生療法】下がった歯ぐきが気になる?【歯肉退縮】


テーマ「歯肉退縮  歯周再生療法 回復」

こんにちは、名古屋市のさぶり歯科です。
歯周病が進行し歯肉(歯ぐき)が下がってしまっていませんか?
そのような露出した歯根に対して、「根面被覆」という歯周外科治療があります。

<上顎前歯部の歯肉退縮に対して、当医院で歯周外科処置を行った一例>

before
after

・歯肉退縮の原因

①歯の位置の関係
顎の骨に対する歯の位置関係が歯ぐきに影響します。唇側に飛び出している歯は歯ぐきが薄くなります。また、顎の骨の薄くなりやすい上下の犬歯の根元も、歯ぐきが薄くなることが多いです

②歯肉や顎の骨の 厚い、薄い
歯並びと同じように、歯肉や顎の骨の厚さにも個人差があります。前歯の根面が露出しやすいのは、歯肉も薄く、骨も薄いことが原因です。

③強い力でのブラッシング(歯磨き)
強い力で歯ブラシを当てて磨くことを長期間つづけていると、歯肉がさがっていってしまいます。

④咬む力の激しさ
咬む力が非常に強かったり、歯ぎしりや食いしばりの癖があると、歯ぐきが下がりやすいと言われています。

⑤歯周病
歯ぐきが下がるケースでよくあるのが歯周病。ただし歯周病で顎骨が全体的に吸収されて歯肉が下がったケースには、根面被覆は適応ではありません。


・歯周外科治療の必要性

歯周病が重症になると深い歯周ポケットを形成します。
そして歯根を支える歯槽骨が吸収し、
不規則で異常な歯槽骨形態となってしまうことがあります。

歯周病の進行を抑制し、メインテナンスにより歯を長持ちさせる為には、歯肉縁下歯石の完全な除去と同時に、ポケットを除去し歯槽骨形態を整える必要があります。

そのためにはフラップ手術という歯周外科処置が必要になりますが、
実際この手術の技術には歯科医のスキルにより大きな格差があるのも事実です。

近年歯周病治療分野の大きな進歩は、「歯周再生療法」という、
歯周病で吸収した歯槽骨を再生される技術が開発され、
特殊な薬剤等も開発され格段に成功率が上昇してきました。

・歯周再生療法とは

重症の歯周病で骨吸収が認められる場合、適応症であれば、
歯周外科処置と同時に「エムドゲイン」「リグロス」等の特殊な薬剤と、
骨移植を同時に用いることで、歯槽骨を再生し、歯を支える骨量を増大させることが可能となってきました。

これらの処置の治療費は、自由診療となりますが、従来では抜歯しなければいけないと言われた重傷歯周病の歯を保存することが可能となってきました。

日本の成人の約80パーセントが何らかの歯周病にかかり、非常に多くの患者さんが歯周病で悩んでいる現実を考えると、これは歯科医学的に非常に大きな発展ということができます。

この特殊な治療の適応症は、垂直性骨欠損など一定の条件を備えることや、初期治療からはじまる一連の歯周病治療の流れを受け入れられる患者さんにのみ、この技術が適応されますので、治療を希望される方は、専門医による詳しいカウンセリングをお受けになった上で検討されることをお勧めします。

・再生療法の分類

  • フラップ手術と同時に「エムドゲイン®」と骨移植を行う方法
  • フラップ手術と同時にGTR法(ゴアテックス膜)を用いる方法
  • 従来からある骨移植を行う方法
  • 矯正治療などを併用して骨レベルを修正する方法
  • その他、様々な技術を組み合わせる方法

    今回はエムドゲイン®法と根面被覆術についてお話します。

・歯肉退縮に対する根面被覆
(CTG 結合組織移植手術、FGG 遊離歯肉移植術)

歯肉退縮が起こると、それまで歯ぐきに隠れていた
歯の根面の象牙質が露出してきます。

審美的な問題だけでなく、露出した象牙質は知覚過敏(冷たいものがしみる)、根面う蝕(歯磨きが上手にできていないことで歯の根面に虫歯ができる)などといった問題が生じてきます。

一度下がってしまった歯肉は、基本的には自然に戻ることはありません。ですが歯肉と顎骨の状態によっては「根面被覆術(結合組織移植手術)」という歯周外科処置で、退縮した歯肉を元の状態に近づけることができます。

・さぶり歯科での歯肉を回復させる歯周再生療法(根面被覆)

【FGG 遊離歯肉移植術】

上皮組織と結合組織の二層を移植する方法です。
歯根の周り、特にインプラントの周囲の角化歯肉(コラーゲン線維に富んだ固く、動かない歯肉)がない場合に適応されます。
歯ブラシの圧力に弱くブラッシングが困難になったり、歯肉退縮(痩せて薄くなる状態)してしまったり、清掃が困難であることから炎症を引き起こすため、インプラントが長持ちしにくいという環境の改善を図る処置です。

口蓋(口の中、上あごの上側の壁)から、上皮のついた歯肉を切り取り、歯根やインプラント周りに移植することによって、角化歯肉を獲得する治療法です。

【CTG 結合組織移植術】

結合組織とは、三層(上皮組織・結合組織・骨膜)から構成されている歯肉の一組織です。
歯肉退縮や、抜歯後の歯槽提(歯を抜いたあとにできる土手のこと)に陥没した部分がある場合に、口蓋から結合組織のみを採取し、歯肉を増やす方法です。

CTG(結合組織移植術)により、歯根面を覆う周囲の歯肉の厚みを増加させることができ、審美的に優れた被せ物を入れることができます。更に、歯みがきがしやすくなり、天然歯及びインプラントの長持ちが期待できます。

・歯肉移植術の流れ

①  歯肉の切開
② 移植組織の挿入
  口蓋から採取した歯肉を挿入する
③ 根面の被覆 
  切開した歯肉を移動させて、移植した組織ごと根面を覆い、縫合する
④  二週間後
  露出していた根面が厚い歯肉で覆われているのを経過観察する

【EMD(歯周組織再生)】

エムドゲインゲルはスウェーデンのビオラ社で開発された歯胚組織を使用した歯周組織再生材料です。
主成分は子供のころに歯が生えてくるときに重要な働きをするタンパク質の一種です。ジェルに含まれるエナメルマトリックスタンパクの刺激により、歯を支える組織の細胞の再生が促進されます。

現在の下顎水準に基づく高い安全性確保の下、幼若豚の歯胚から抽出精製したもので、世界44ヵ国以上で使用されています。

・エムドゲイン®ゲルを使用した歯周組織再生療法の流れ

  • 治療前 …歯肉の腫れがある程度治まった状態
    重度の歯周病になっていた状態から、患者さんの歯磨きの改善や、歯科での歯周ポケット内のプラークや歯石を可能な限り歯周基本治療(ブラッシング、SRP等)で取り除きます。ある程度歯肉の炎症が改善した段階になってはじめて、歯周組織再生療法に進むことができます。
  • 再生材料を塗布 …歯肉を切り開いて再生材料を塗布する
    歯肉を切り開いてめくり、歯根を露出させてから、歯周基本治療で取り切れなかった深いポケット内に残存している歯石や歯垢を、徹底的に除去します(フラップ手術)。その後、再生材料が付着しやすいように歯根面を処理してから、エムドゲイン®ゲルを塗布します。シリンジでジェルを歯根の下から上へと塗り付けます。
  • 治療後 …歯肉を元の位置に戻して縫合する
    歯肉を元通りの位置に戻して縫合をすると、間もなく歯肉と顎の骨の間のスペースに血餅ができますが、この血餅が重要です。血餅は、蝶でいうならさなぎのようなもの。再生療法は、このさなぎを蝶へと孵化させる、つまり歯を支える組織に変化させることが目的なのです。
  • 組織が再生 …失われた組織の獲得
    エムドゲイン®ゲルの作用で、歯根に残っていた歯根膜の細胞が刺激されて、血餅や歯根膜やセメント質、顎の骨に変化していきます。
    うまく再生できたか治療の結果がわかるのは8~9ヶ月後。歯周病になる前の状態に元通りとはいきませんが、歯を支える組織のボリュームが回復します。再生した顎骨は、2~3年かけて成熟していきます。
処置前 歯周病が進行しており、歯肉も退縮し薄いため、再生療法が適応となる
 開後 唇側吸収が顕著である
CTG 口蓋より結合組織を採取
口蓋より採取された移植片
骨移植剤とエムドゲイン®ゲルの併用
結合組織を差し込み縫合。歯肉を厚くした状態がわかる

・さいごに

自分の歯を健康に保ち、将来にわたって快適な人生を送るためにも、まずは定期的歯科検診を受け、メインテナンス治療を継続することです。その内容は毎日の歯磨きをチェックし正しいブラッシングを指導してもらい、毎日励行することです。またPMTC(専門的歯のクリーニング)を定期的に行うことにより歯周病の予防が可能となります。

万一重症で骨欠損を伴う歯周病を発見したら、再生治療により失った歯槽骨を回復することができ、歯の動揺や歯周炎症状がほぼ完璧に改善します。

再生治療はここ数年でその技術が大幅に改善し、成功率もあがりました。専門医による外科処置で、1~2時間で安全に受けることが出来ます。安易に抜歯をしてインプラント治療を受けるより比較的安価で、自分の歯を保存できる非常に有効な治療法です。

再生治療には適応症があり、まだ万能ではありません。
是非、一度専門医による診断とカウンセリングをお勧めします。

さぶり歯科は、完全予約制となっています。
予約は、電話、または、メールでお受けすることが可能です。

今後は日本での最高の笑顔を求めて歯だけではなく歯を支える骨や歯肉の健康と美しさを整える治療の重要性が高まってくると思われます。 さぶり歯科では、歯肉の調整や再建を行うことで、素敵な笑顔がいつまでも維持できるように取り組んでおります。お悩みがある方はぜひご相談ください。

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